お化け屋敷が好き

 わたしには子供がいない。たまに夫婦ででかけるときも、子供がいないために入れない世界がある。種々のレベルでそんな制限があり、そのための得失もある。得も決して少なくはないことを認めつつも、自分で残念なのは遊園地の「お化け屋敷」(人間演出型)に入って楽しめなくなったこと。駄目なのだ。幽霊やお化けさん達は、初老の夫婦やおっさんにチョッカイをだしてくれない。
 お化け屋敷なんか恐くない、といいつつ、暗闇の中で、だんだんへっぴり腰になっていく面白さ。照れ笑いを浮かべながら、迷路を進むうちに、思わぬ方向から「仕掛け」られ、思わず「おおっ」と声を上げてしまう恥ずかしさ。それ以外にも、機械仕掛けのお化けを見物する面白さもある。

 そんなわけで「「幽霊屋敷」の文化史」(加藤耕一著)なる書名を店頭で見つけたときには心が躍り、手にとって読んでみると、どうやらディズニーランドの「ホーンテッドマンション」の話らしかったので、いったんは買うのを止めた。ホーンテッドマンションに入ったことがなかったし、わたしの好きな「お化け屋敷」とアレは別のものだと信じていたから。同じ西洋系お化けでも、ディズニーではなくてユニバーサルの狼男やミイラ男、フランケンシュタインの怪物、それ以外にもハマープロや雑多なマッドサイエンティストものなど、好きなお化けは多い。別にディズニーが嫌いというわけではないが、それぞれ持ち味があるということだ。


 それでも新聞書評で、またこの書名をみた翌日、会社の帰りに買ってしまった。

「幽霊屋敷」の文化史 (講談社現代新書)

「幽霊屋敷」の文化史 (講談社現代新書)

幽霊屋敷、という響きには勝てなかったということだ。
そして読み進むと、たしかにホーンテッドマンションに特化した内容が多いのだが、その前提としていわゆるゴシック文学の話が出てくる。そしてその例が、随所に引用され、楽しめるようになっている。しかし、これは・・。最近、わたしはこれに似たものを読んだ気がする。
 それは東雅夫さんの「怪談文芸ハンドブック」だった。
怪談文芸ハンドブック (幽BOOKS)

怪談文芸ハンドブック (幽BOOKS)

この中で、ゴシック文学が歴史的に説明され、その表現が引用されており、当然、それらは重複するのだ。

 高校生の頃から、恐い話が書きたくてチャレンジしてみるがうまくいかない。ひとつには自分が臆病で、夜中に自室で妄想を膨らませすぎると、本当に窓から怪物が入ってくる気がして書き続けられなかったせいである。
だからといって明るいうちに、計画的に文章を書けるタイプではなかった。
50を過ぎた今、小説書きを再開するにあたり、怪談も書いてみたくて、ハンドブックを読んだのだった。

ちなみに家内はホーンテッドマンションが好きで、独身時代に何度も行ったそうな。