インセンティブのこと

 経済学のお勉強を始めて、すぐに出会うのが、この「インセンティブ」という単語。

 結構、日常的にも耳にする言葉ですが、これが経済の行方を左右するという点では、要素としては非常に重要だと思います。ただインセンティブの方向の判断は、社会学や心理学、はては民俗学の分野のような気がします。

 国内消費の増大のために、低金利政策をとる。

 ここでいう消費は、わたしら個人の買い物ではなく、企業の設備投資のことだと思います。だから、個人のインセンティブを問題にするのは間違いかもしれません。
 でも麻生首相のバラマキは、個人相手の消費拡大が目的です。
そうだとすると、個人の気持ちとして銀行預金の金利や年金があてにならない以上、金をつかいたくてもつかえない、というのが日本的感覚だと思いますから、いくら金をばらまいても将来があてにならない我が国では消費のインセンティブは高まらないということになります。

 つまり経済学の常識とは異なるのですが、日本で個人消費の拡大をはかるのであれば、銀行金利を高金利にして、一定の貯金があれば老後は、その利息で生活できる、という状態を実現すべきだということになります。

 このあたりがヨーロッパ人の感覚を基に組み立てられた経済学では理解できないところだと思います。

 日本人は、江戸時代の頃から経済再建=節約・倹約という図式になりやすいのです。

 国民年金の未納者である自営業者の多くは、最初からそんな生活できないような涙金なんかあてにしてませんでした。その代わり1億円貯金があれば、金利が毎年500万円くらいは期待できるから、老後は大丈夫と信じて、頑張ったのです。しかし、金利がゼロでは毎日節約を続けて老後に備えるしかありません。この国の年金は全く信用できないのですから。

 日本人にとっての消費インセンティブは「安心」という感覚なのです。今、使わなければ損だ、という感覚はわかっていても、将来の文無し状態よりはマシと考えてしまうのです。