個室ビデオ火災と格差社会

 まず、15名もの方が亡くなられたことを大変痛ましく思います。

 ただ報道の一部に、この事件と昨今の格差社会を安易に結び付ける論調があることには、やや違和感があります。

 わたしは今51歳ですが、わたしが大学生の頃から、深夜喫茶や映画館をホテル代わりに夜明かしする人は珍しくありませんでした。さらに少し後には、カプセルホテルも登場しています。

 たしかにマンガ喫茶などを住居代わりにする日雇い労働者が増えていると伝えられています。この個室ビデオも、その類の利用法があったと思います。しかし、そうした事実と、いったん出火の際に逃げ場がないような建物内で、あのような営業を続けていたことによる災厄は、次元が違うはなしだと思います。

 言い換えれば、格差社会がどうであろうと、客が深夜仮眠をとる施設で、あのように非常口もないような防火・避難体制が不備な施設であれば、このような惨事になったろう、ということです。それは個室ビデオでも、ホテル・ニュージャパンでも一緒だということです。

 マスコミ識者の中には、マンガ喫茶や個室ビデオで深夜仮眠をとる国民=格差社会の犠牲者という構図を思いつき、得意そうにしゃべる人がいますが、それを言うなら、日本の、特に大都会の労働者・若者は昔から、そんな扱いしかされてこなかった、ということなのです。そして、おそらくは今後もそういう扱いをされつづけると思います。

 だから問題の解決は、格差社会の緩和・解消などというできもしない「お題目」ではなく、消防法・建築基準法風営法の厳格な適用、あるいは法整備による危険施設の改善だろうと思います。

 もちろん所得分配の不公正の是正は、非常に重要です。でも、今回の火災からの教訓は、やはり危険施設の放置はいけないということだと思います。一見、ゴミゴミして汚くてもいい、でも、せめて火事のときの逃げ場所がなければならない。それがない場合には、経営者や所有者がはっきりしなかろうが言うことを聞かなかろうが、強制執行により営業停止もしくは、建物解体をすべきでしょう。なぜなら、そんな建物は「法禁物」として所有権の保護が及ばないと考えられるからです。