平将門のDVD

 お盆休み中に、レンタルで「風と雲と虹と」を観ました。30年くらい前のNHKの大河ドラマの完全版。当時のわたしは、書店に並んだ関連本を、ワザと「ヘーショーモン」と読んで、周囲の白い眼を楽しんだものでした。

 平将門さんと藤原純友さんが主人公のドラマですが、世間的には将門さんが主役と認識されていたと思いますが、当時、受験勉強中だったかなんかで、わたしはこいつを観ていません。次作の「花神」は、大村益次郎中村梅之助=伝七親分のイメージが固定しているくらいだから、間違いなく観ていたはずなんですが。

 で、30年を経て観た感想。こりゃ、純友物語にしたほうが良かったのではないか?

 「だって」(by 貴子姫=吉永小百合)、将門さんは朴念仁の困ったちゃんで、周囲の大人に迷惑をかけ続けるくせに、妙に執念深く、それでいて坂東武者としての自意識過剰。起こす事件は女がらみばかりのような気もするなど、とても感情移入できません。

 それにひきかえ、緒形拳扮する純友のカッコいいこと。王朝社会に対する怒りを胸に、自分流に戦いをしかけていき、同時に人の情けもわかる。周囲には吉行和子さんらの扮するクグツ者など、レ・ミゼラブルが集まり、強力かつ柔軟な集団を形成している。

 海音寺潮五郎の長い原作も読んでみたけど、申し訳ありません、感動しませんでした。

 特に書かれた時代(昭和20年代末〜30年代半ば)を考えたとき、ひめみこがさらわれて遊女になり、朴念仁ゆえに一度はふられた将門と遊女宿で再会するあたりの書きっぷりは、下品だと感じました。いっそ団鬼六のほうがいさぎよい気がする。

 念のため、平将門の別資料として講談社学術文庫の「平将門」(北山茂夫著)を読みました。原著の刊行年からすると、大河関連の出版物の可能性もありますが、小説やドラマの将門よりは、好感がもてます。

平 将門 (講談社学術文庫)

平 将門 (講談社学術文庫)

 加藤剛さんはハンサムなんだけど、緒形拳さんの笑顔には負けてしまいますね。