ウルトラマンのジャミラ

ウルトラマン」シリーズ第一作のエピソード中でも名作と評判が高いのが、ジャミラが出てくる回である。

大筋は、初期の宇宙開発競争の中、水のない惑星に不時着した宇宙飛行士ジャミラが、怪獣となって地球に戻り、科学特捜隊ウルトラマンに倒されるというもの。途中、怪獣の正体が元宇宙飛行士と知ったイデ隊員らが、ジャミラへの攻撃をためらう姿や、あくまで怪獣として倒されてしまうジャミラの悲劇に、心を動かされたファンが多い。

わたしは初見時、小学校低学年だった。悲しい話という印象をもった記憶がある。

ただそのときから、ストーリー展開には違和感があった。今で言うツッコミどころが多すぎた気がする。

まず。いかに宇宙飛行士が過酷な環境におかれた結果としても、身長50メートルの怪獣に変身するというのは、子供心にも納得できなかった。

次にジャミラの変身譚を語る外国人関係者。なんでそんな事情を知っているの?なんで怪獣がジャミラだとわかったの?

あの怪獣はどうやって見えない宇宙船をつくって地球に帰ってきたの?道具や材料はどうしたの?あんな姿で宇宙船を組み立てられたの?


実は、今のわたしなら、これらの疑問にもっともらしい理由をつけることも可能だ。たとえば1番簡単なのは、不時着した惑星には、ジャミラ型の住民が文明をきずいており、ジャミラの生命を守るため、あの姿に改造・変身させた上で、地球帰還用の宇宙船も用意してくれたのだとか・・。


もちろん、どんな理由づけをしてもアラさがしは可能だろうけど、少なくとも放映されたストーリーのように納得できないものではない。
そんな説明道具は不要だ。お前はガキだ、と言ってわたしを非難する人もいると思う。

しかし、ことは劇中の科学的考証のでたらめさのレベルの話ではない。ストーリーが成り立つ上での必須の要素のはなしである。不条理劇でない限り、最低限の論理的整合性がなければ、ドラマが成り立たない、と思う。

ジャミラの話は、ネットで見る限り、多くの人が積極的評価を与えている。しかし、書き込みをしていない、かつての視聴者の多くはわたしと同じツッコミを感じて、素直にストーリーに入り込めなかったのではないだろうか。

このような欠点をもつ、という指摘は、ジャミラのエピソードのもつテーマの重さやユニークさの評価とは別次元のはなしである。
しかしストーリーとして破綻している点は、やはり見逃すわけにはいかない。それを軽視したことで、ウルトラマンシリーズは、今日でも一部のマニアを除いて、子供向け作品にとどまらざるを得ない結果となったのではないだろうか。