見かけの正義

 ここ最近、弁護士法人司法書士などのCMが増えている。営業品目のひとつが、消費者金融などの過払い金利の取り戻し。

 もう30年近い昔、法律事務所の事務員だったわたしは、当時のサラ金被害者の救済=債務整理を手伝っていた。当時の判例では、過払い金利の返還までは認められなかった。超過金利分を元金に充当することが認められ、それが画期的判決と評価されていた時代だ。

 あのころでさえも、本当に金融業者だけが悪いのかは疑問だった。金融業者のバックには大銀行がいて、要は悪役を押し付けられているのだと思った。それに無担保でギャンブル狂いの個人に金を貸す以上、高金利は当たり前だとも思った。

 それが過払い金の返還を命ずる判決が出て、さらに金融関連法が改正された結果、消費者金融会社が次々に破綻したり、廃業に追い込まれていった。さらに商工ローンも同様の結果だ。

 見かけの正義がここでもまかり通っている。無担保の個人が金を借りるのは難しくなり、中小零細会社の手形を割引してくれるところはなくなってしまった。おかげでキャッシュフローのショートから黒字倒産の会社も出ている。

 マスコミ文化人などはわかりやすい悪役をつくり、それを攻撃することで飯を食っている。それにのせられて、社会的に存在理由がある存在が消されていく。その結果、社会の運営が行き詰まっていく。

 当地では、土建屋が徹底的にいじめられた結果、冬の除雪作業を負担する会社が足りなくなってしまった。

 見かけの正義だけで、長い歴史がある制度・存在を否定するのは危険だと思う。