消費税率アップ

 政府が消費税率の引き上げ時期を示したことについて、マスコミが例によって叩いている。

 1.不況(恐慌)の時期に、税率アップを示すのは、国民の苦しみを知らないからだ。

 2.税率を上げる前に、行政の効率化をはかり、経費節約すべきだ。

 3.選挙前に税率アップを明言すれば、間違いなく与党は大敗する。



 3は論外だとしても、1も2も論点がずれている気がする。



 たしかに国民生活が苦しく、家計の収入減の中で、消費税のような間接税を引き上げれば、ますます格差拡大につながるという考え方には一理ある。しかし、生活必需品目を課税対象から外すことで、生活防衛をはかることは可能であるし、たとえば収入減といいながら、携帯電話代に、一世帯で1ヶ月6万円近くかけるような野放図な状況が一方には存在する。あえて言うが、貧乏なら贅沢を控えるのは当然なのだ。それでも食事や住居に困っている人に対して、福祉という形で、行政が助けることは必要だが、その点のメリハリは重要だと思う。
 そしてその行政の財源確保のためには、消費税が公平だと思う。自営業や企業の会計処理の中で、形式的な赤字を計上する「節税」を実施して、法人税を免れていることが多い。そうだとすれば、収入段階ではなく、消費段階で捕捉する間接税のほうが公平だと思う。

 このように間接税方式が公平だとすれば、その時期の明示が悪いとは考えにくい。「国民感情」に反する、とか言うが、国民が皆、感情論のみで動く人間ばかりだとは思えない。本来、冷静に政策の内容を説明し、その是非を客観的かつ冷静に分析された上で、判断を求められれば、大部分の国民は納得するはずだ。この点で、マスコミの多くは「マッチポンプ」そのものだと思う。むしろ時期を知らせることなく、いつのまにか税率アップが既定の路線だとされてきた今までが、欺瞞なのだと思う。

 さらに時期を明示するメリットは、直前の駆け込み需要による消費拡大が期待できることだ。この点、逆に引き上げ後に反動がくることが明らかだとの議論もある。しかし現時点で消費意欲の減少が問題になっているのに、なにを心配しているのだろうか。今現在の飢餓状態に対して、非常食を食べることに対して、将来の地震や台風を心配するようなものだ。今、飢え死にしてしまえば、来年の台風に対する備えがあってもなんにもならないのだ。
 金利引下げが消費拡大、通貨の市中流通量拡大をねらったものである以上、再びのデフレを防ぐためにも、駆け込み需要だろうがなんだろうが、消費拡大につながる方策をとるべきである。

 最後に、行政の効率化をはかるべきとの議論は正論であるが、これはつねに正論であり、だから税率を上げるな、という議論にはつながらないのではないか。
 さらに不況ということを考えれば、行政職員の人件費(主に老後のために「貯蓄」される=共済など)以外の経費の拡大は一定の必要があるのではないか。たとえば役所が節約優先とのことで、消費を控えれば、それだけ需要が減少し、景気に悪影響が及ぶのは明らかなのだ。財政再建と不況対策との優先順位の問題ではないか。

 マスコミは、衆愚におもねるのは程々にして欲しい、とつくづく思う。