上半期を過ぎて

いつのまにか、今年も半分が過ぎてしまった。例年とは違う経過だった。まず、久しぶりに司法試験の択一式に落ちたこと。毎年毎年、論文落ちで、いいかげんウンザリしていたのだが、やはり門前払いはきつい。とは言っても、今年の6月の仕事の異常な煩雑さを考えると、落ちて正解だったのだと思う。準備なんかやってられなかった。体も悲鳴をあげていて、春先からジンマシンがなおらない。ちょっとしたストレスで、すぐに手足にミミズバレが発生する。1時間もせずに消えてしまうが、つくづくこの仕事から足を洗いたいのだと再自覚する。

 今、山田風太郎の虫けら日記を読んでいる。戦時中、彼が20歳頃の日記である。それが48歳の現在の自分の心境と合致する部分が多い。俺が幼いのだ、と思うが、周囲が無知・無教養に思える中、ゆっくり好きな本を読み、うまいものを食べたり飲んだりできる生活を求める気持ちは共通である。問題は周囲が本当に無知・無教養なのか、ということであるが、あえて日記で無用な謙遜はすまい。周囲はその人柄が愛すべきかどうかは別にして、自分と比べてはるかに、無知であり無教養である。おそらく、山田青年の周囲も同様だったと想像できる。

 俺はどこにいくのか。

 会社のお掃除オバチャンが、乳がんで手術するそうな。退院してきたら、また就職させてくれと、くどいほど念を押された。そうまでして、こんな会社に出てきたいのか?せっかく手術でとりとめた大事な命を、こんな会社の人間たちの間で消費していいのか。

 俺は残りの生をどうしたいのか?司法試験に合格したとして、今、俺の周囲にいる人たち(俺は彼らの顔を見るだけでジンマシンが出るのだ)と同類の連中の悩みと向き合えるのだろうか。嫌なことだ。強欲で無知で礼儀知らず、それでいて自分は人間として「中の上」だと思っている連中。

 残念なのは、世界の99%がそんな連中で構成されているということであり、俺がそれを知っているということだ。